スティーヴン・キング「ザ・スタンド」読了

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10月19日から土日を除いて読み始めたスティーヴン・キングの「ザ・スタンド」。
全5巻でどの巻も500ページ近くあり、いつ読み終えるのかと思いましたが、キャラや土地の名前をメモし、アメリカの地図をチェックしながら昨晩やっと読み終えました。

アメリカの軍が開発した細菌があるきっかけで施設から流出。
最初はひとりだった感染者が瞬く間にアメリカ全土に広がりほとんどの人が死んでしまいます。そんな状況下、僅かながら各地に生存者がいました。
細菌によるアウトブレイクもの?…と読み出した私ですが、
それはやがて生存者をふたつに分けた善と悪との戦いに発展していきます。

第1巻第2巻とメインキャラの生い立ちや心情などを事細かに語り第3巻で善が結集。
コロラドのボールダーに1つの町が出来上がります。そして悪の権化とも言うべき闇の男ことランドル・フラッグもラスベガスに罪人やごろつきなどを集めて悪の軍団を結成。
この辺りから話は超常現象と宗教色に彩られていき、善の仲間からも悪の力に引き寄せられ、闇の男のいるベガス目指して向かう者も現れます。善の心の支えだったマザーの遺言により、全てを投げ打ち、そこに何が待ち受けているのかもわからずに ( フラッグがいることくらいしかわからない ) 4人の仲間がベガス目指して旅に出ます。

キングはこの作品を自分の「指輪物語」と公言し、作中でもキャラにそれについて言及させたり例えとして使ったりしています。聖書では「預言者は荒野へ赴くという伝統がある」とも登場人物に言わせていて指輪物語と聖書のつながりなど考えてもなかった私には眼からウロコでした。キャラも幾分なぞっているのではないかと思われる節もあって…
西に旅立ったスチュ、ラリー、ラルフ、グレンは、フロド、サム、メリー、ピピンにも置き換えることが出来るし、放火魔のゴミ箱男ことトラッシュ・キャン・マンの道化のような描かれ方はゴラム、知恵遅れのトムの口癖「む-う-う-ん」は ( のちにストーリー的にこれにも意味づけされているのですが ) 「指輪」の木の髭の感動詞「フーム、ホム」を思い起こさせます。そしてなによりも悪の化身闇の男の設定が「ジ・アイ」サウロンのひとつの目そのものなのです。

キングが「指輪物語」にオマージュを捧げているという事に興味を持って読み始めた「ザ・スタンド」ですが、聾唖のニック、知恵遅れのトム、放火魔のゴミ箱男、ねたみと憎しみで出来ているハロルド、闇の男の呪縛から逃れられずにいる女教師ナディーンなど、とにかく善のキャラよりも悪に浸食されつつあるキャラの心理描写が巧みすぎて、ぐいぐい読んでしまいました。
フラニーの日記、ハロルドの元帳のくだりは邪悪でよこしまな心情が語られお互いの駆け引きをハラハラしながら堪能しました。善対悪の対決は思ったより早く結末が描かれ、この先をどう読ませるのかと思いきや、この最後の過程で描かれる数々の奇跡と心温まるエピソードに幾度となく泣かせられました。特に犬のコジャック!ポイント高し!!

たしかに「指輪物語」をなぞってはいますが、これは純然たるキングの描く「闇」の物語であり、悪が如何に訪れ、心を闇に変えていくか、ナディーンではありませんが、人はその悪の解き放つ暗黒から逃れることは出来ないのか…全てを無くしたリセットされた世界でも、やはり人は武器を手にし、過度な文明への道を歩むという過ちを犯してしまうのか。そんなそんなキングの問いかけに、今、自分のおかれた世界を重ね合わせてみたりもしました。
そして、ずっと気になっていたこと。「ザ・スタンド」と言うタイトルの意味がわからなくて、とっても気になっていたんですが、それがわかった時に「へ?」となってしまいました。ちょっと裏をかかれたような心境とでも言いましょうか…。この作品がアメリカで最初に発行された時に削除された400ページの中に、このラストシーンも含まれていたそうなのですが、そしたらタイトルの意味は説明されずに終わっていたんでしょうか。

最後に、ギレルモ・デルトロ&宮部みゆきファンの私の戯れ言ですが…特に最近の宮部作品は、キングファンの宮部さんが、よりキングに近づいているような気がしてなりません。キャラクターの性格付け、超常現象、そしてタイトルの意味が最後に判明する点も踏襲しているように思えてなりませんでした。まあそれを言うと読みながら、ずっと思っていたのは、このお話そのものがデルトロの「ザ・ストレイン」に激似と言う事です。まあ逆なんですけどね。私「ザ・ストレイン」の方を先に読んでいますのでこう書かせて貰いましたが…細菌ものと思わせておいて実は…とか、キャラにロック歌手やチンピラなどがいる点。キャラの生い立ちなどを事細かに掘り下げて書くスタイル、そして大きく言えば人類滅亡まで悪に追い詰められるっという設定。絶対下敷きもしくは参考にしてる…か、それで言い過ぎだったら、オマージュか、想像の域を出ませんが、デルトロが「ザ・スタンド」を好きなことは間違いないと思います。

これで私の当初の目論見…「ダークタワー」を読むために過去の関連作品を読む第1弾が達成されました。巻末の解説を読んだら「ダークタワー」の第4巻に大いに関係してたことが書かれていて…これは「ザ・スタンド」を読んでなきゃわからないじゃん!って痛感させられましたよ。ってやっぱり他の作品も発行順に読まないとダメなのかなあ。
そしたら「ザ・スタンド」関連の「ダークタワー」の4巻を読むまでには…

タリスマン The Talisman (1984年)
IT-イット- It (1986年)
ドラゴンの眼 The Eyes of the Dragon (1987年)
ダーク・タワー 第二巻「運命の三人」 The Drawing of the Three (1987年)
ダーク・タワー 第三巻「荒地」 The Waste Lands (1991年)
不眠症 Insomnia (1994年)
ローズ・マダー Rose Madder (1995年)
デスペレーション Desperation (1996年)
レギュレイターズ The Regulators (1996年)
ダーク・タワー 第四巻「魔道師と水晶球」 Wizard & Glass (1997年)

って読んで行かなきゃダメなのね。
ドラゴンの眼買ってないし…。
どっちにしても来年までダークタワーはおあづけだよねえ。こりゃあ。(笑)


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アメリカの地図を印刷してチェックしながら読みました。
とっても役に立ちました。フラニーの故郷、メイン州ってあんな東にあったんだなあとか、ニックがアーカンソー→オクラホマ→カンザスを経由してネブラスカでマザーと会ったんだなあとか、ゴミ箱男がインディアナ→イリノイ→アイオア→ネブラスカ→コロラド→ユタ→ネバダとほぼアメリカを縦断してラスベガスに辿り着いたんだなあとか…
って言うか、ラスベガスがネバダ州にあるのさえ知らなかった私。それを言うとロッキー山脈 ( 地図のオレンジで線を引いてる部分 ) ってここにあったんだ~とかね。ホントに恥ずかしすぎる!そうそう、「ザ・キッド」なんて強烈なキャラもいましたね。翻訳のセリフが大阪弁で…なんか妙だなあと思ったんですけど、ルイジアナ州生まれだと方言がキツいって感じなのかなあ?お隣のテキサス生まれのスチュはそうでもなさそうなんですけどねえ。



こちら「ザ・スタンド」のテレビミニシリーズの予告編。(英語)
某所に字幕付きであるようなので、そのうち見てみようかなあと思ってます。

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